角野栄子先生講演会

仙台市の隣、名取市文化会館で開かれた、児童文学作家、角野栄子先生の講演会、演題「小さな物語 大きな世界」を拝聴して来ました。
名取子ども読書活動推進計画策定記念の講演会だそうです。
中ホールに80人ほどのお客さんが来ておられました。

オープニングに、二つの読み聞かせグループによる、素ばなし「かえるぼたもち」、読み聞かせ「てぶくろ」の、講演がありました。
一人の人が、椅子に座って、本などを持たずに、物語を語っていく方式の、素ばなしというのは、初めて知りました。(NHK教育の「おはなしのくに」の、俳優さんが物語を語っていく形式などは、素ばなしに近いと思います。)
「かえるぼたもち」は知っている話でしたが、東北弁のイントネーションの混じった語り口が素朴で、笑いを誘いました。
語り手の方は、情景に合わせながら、ずっと、ぼたもちが入っている箱の風呂敷を解いたり、箱を動かしたりしながら、演じるように語っておられましたが、ラストに「ほらっ」と箱を開けたら、本当に紙製のカエルがうわっとビックリ箱のように飛び出し、「わぁ!?」と会場に驚きと笑いの声が沸きました。
「てぶくろ」も知っている話でしたが、巨大な手袋の絵が会場に飾られ、脇に読み手の方が幾人も並びました。ねずみや、カエルや、うさぎ、と色んな動物が登場すると、手袋の陰から、棒のついた動物の絵が顔を出し、読み聞かせと言うより、人形劇のようでした。

それから、名取市教育委員会の教育長さんのあいさつがありました。
……5分の予定が、10分くらい、読書の大切さについて熱く語っておられました。

その後、尚絅学院短大の教授の方から、この名取子ども読書活動推進計画策定についての、基調報告がされました。
先生のおっしゃることによると、仙台市と比べても、名取市はやや子どもの読書量が少ないとのことで、全国平均などを述べておられて、名取市図書館の老朽化問題などを取り上げておられました。

そして、いよいよ記念講演が始まり、角野栄子先生が登場されました。
白髪をボブにまとめられて、グリーンのロングワンピースに、花がたくさんついた茶色のネックレスを下げられ、お洒落な赤い眼鏡をされておられました。初めてお目にかかりましたが、とても上品で綺麗な方だったので、ビックリしました。
素敵な年の取り方をされている女性を見ると、素敵な生き方をされておられるのだろうなと推察されて、とても羨ましく感じます。

講演は一時間に渡り、内容も多岐に渡りました。一時間、全く飽きることなく、次々に語られる様々なエピソードや、子どもの読書に関するご自身のご意見を拝聴しました。
最近出されたという、自選作品集「角野栄子のちいさなどうわたち(全6巻)」もしっかり宣伝しておられました(笑)
5歳でお母様を亡くされ、寂しかった心の内に、お父様の膝の上で、語り聞かされた物語が、ご自身の原点であるとおっしゃっておられました。
そして、ご著作の元ネタになった出来事などを織り交ぜながら、想像力が創造力を生み出すということ、読書が構築する想像力の世界について語られました。
頭ごなしに子どもに読書を押しつけるのではなく、子どもが読みたくなるような本を子どもに提供してあげること、そういう読書によって、子ども自身の世界が広がるのだということをおっしゃっていたように思います。
読書好きになって欲しいと願いつつも、読み聞かせや語り聞かせなどはろくにしてやれず、テレビっ子に育ててしまった息子を持つ母としては、いささか耳の痛い話ではありましたが、両親共に読書好きですから、息子も読書好きに育ってくれないかな〜と期待しています。