流れゆく時の中で

今日、「有頂天家族」の第一話を見た。小説のイメージぴったりで、とても面白かった。

以下、暗い愚痴になるので折り畳みます。 主役の下鴨矢三郎を演じておられるのは、櫻井孝宏さん。ちょっととぼけた口調が、矢三郎のイメージぴったりだった。

実は、私が彼を知ったのは、11年前の「プリンセスチュチュ」のふぁきあ役からだ。
夫から指摘されて、「化物語」「猫物語」の忍野メメ役もされていると知って、とても驚いた。
ふぁきあ、忍野メメ、下鴨矢三郎、どれも全くタイプの違う役柄だからだ。それらを演じ分けるとは、さすが名優の誉れ高い方だ。

最近のアニメはスパンが短い。櫻井孝宏さんほどの方ならば、仕事はどんどん舞い込むだろうし、特定のキャラに愛着を持つなんてお暇はないんじゃないかと思ったら、ふと寂しくなった。

私は今でも、ふぁきあとあひるの心の絆の美しさを覚えているのに。11年経った今、ふぁきあと全く違う、とぼけた狸を声優さんは演じておられる。

少し話を変えよう。
鎧伝サムライトルーパーには、カセットコレクションシリーズがある。
その四巻目で、草尾毅さんは真田遼の、おそらく前世と思われる少年役を演じられた。
サムライトルーパーの設定(遼の家族構成など)を知っているファンなら、これは遼ではないということは、すぐに分かる、そういうキャラクターだった。

ところが、演じられた草尾さんは、ラストのコメンタリーで「ええと、遼の子ども時代の役なんですかね? とにかく幼い感じで演じてみました」と話しておられた。
それを聞いて、当時の私はとてもガッカリした。
草尾さんは与えられた脚本を読んでいるだけで、ご自分の演じている真田遼が、どういう家族構成になっているとか、そういう知識は持っていらっしゃらないのだと、初めて知ったからだ。

でも、それが声優さんのお仕事なのだとも思った。ストーリーに絡むならともかく、そうでないのならば、いちいち、自分のキャラがどういう家族構成なのかなんて、公式キャラブックなんか読んでいる暇は、声優さんにはないのだ。お仕事は次々に来るのだから。
与えられた役柄を、監督の指示通りに、最善を尽くして演じる。そして、仕事が終わったら、次の役柄をこなすために頭を切り替える。それが声優さんなのだと思った。

ファンがどれだけ、その役柄を演じた声優さんに思い入れを持っても、それはただのワガママであり、感傷に過ぎないのかもしれない。

時は流れてゆく。アニメは次々に新作が作られ、また終了してゆく。スタッフさんは次のステップへどんどん進んで行く。
では、アニメに心を奪われて、忘れられなくなった、ファンの想いはどこへ行くのだろう。
演者にすら忘れられたキャラに、心を奪われた者はどうなるのだろう。

とても寂しくなった。